めまぐるしく移り変わるファッションの原動力、すなわち『スピードーシック』に対するファッションーアイテムの渇望を満たすために、常に低価格を追求し続けているからである。メーカーの国外脱出は、アメリカ経済にとって打撃であるだけでなく、給料の底値争いに拍車をかけることにもなり、ただでさえ低い労賃がさらに引き下げられてしまう。ショッキングな数字も出ている。労働統計局によれば、アメリカのアパレル工場労働者の時給は平均七ドルだが、インドネシアでは一五セントなのだ。しかし、アパレルーメーカー側は、商品を大幅に値上げしない限り、こうしたやり方を変える余裕はないと論ずる。そして、口先だけは実に気前のいい消費者も実際には財布の紐は緩めないものである。遠い異国でミシンを回す労働者のために、自ら汗水流して稼いだお金を手放す気が、普通の買い物客にどれだけあるのか。本当のところは疑わしい。ところで、ごく普通の消費者は、おめでたいことに、服がどこから来るのかを知らずにいる。一九三〇年代以降のニューヨークのアパレル業界には、工場労働者がマフィアに脅されたり、暴力を振るわれたり、果ては殺されたりという陰惨な歴史があるのだが、そんな話を耳にしたことのある人はほとんどいないはずだ。実は、かつて急成長中だったこの街のガーメントーセンターに目をつけたラーコーザーノストラが、ほぼ七五年の長さにわたってビジネスを牛耳り、小売価格をつり上げたり、多くのメーカーを他国へ追いやったりしていたのである。ファッションは、服を作る人々の窮状ばかりでなく、ほかのことに対しても、私たちを無頓着にする。